残された伝承





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かつて、神と呼ばれる存在がいました。

いつしか神は世界と生命を創造し、その “ 箱庭 ” で暮らす人々を見守ることにしました。

神は、小さくて平和な世界を眺めるのが大好きでした。

しかし、その平和だった世界も、大きくなるにつれて歪みを生じるようになっていきました。

人々が争う様子に苦悩した神は、ひとつの生命に干渉し、聖女としての役割を課すことを決めます。

そんな神の考えに反対する者がいました。

彼の名は、フォラートル。

神によって生み出された生命であり、神の親友だったとも伝えられている天使です。

大好きだった平和な世界を取り戻したいという神の気持ちは、痛いほどに理解できました。

そのために一人の少女の人生を狂わせて良いのか、その迷いは晴れませんでした。

神と少女の狭間で苦しみながらも、やがて彼は地上へと降り立ちました。

少女に使命を伝えるためです。

世界の歪みに心を痛めた少女は、果てしない旅に出ることを決意しました。

しかし、その旅で “ 聖女 ” の願いが叶えられることはありませんでした。

もう平和な世界は戻ってこない。

そう絶望した神は、ついに箱庭そのものを消してしまうことを決心します。

聖女の結末と、神の傲慢。

悲しみに満ちていたフォラートルの想いは暴走し、神の住んでいた世界を、神もろとも消滅させてしまいました。

創造主の消えた箱庭…

それが、いま私たちが生きている世界だと伝えられています―





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