冒険前夜
♪『冒険前夜』 を聴く♪
草原の村に残された伝承。
その物語を丁寧に読み聞かせる老人と、静かに耳を傾ける少女。
少女の名前は、アールティヒ。
草原の村で生まれ育ち、いつも元気に走りまわって遊んでいる女の子。
少女の傍に両親の姿はありませんが、村の人たちに温かく見守られながら幸せな毎日を送っています。
そんな、何不自由なく生活をしている少女にも夢がありました。
“ 外の世界を旅してみたい ”
そして、叶えたい願いがありました。
“ お父さんとお母さんに会いたい ”
その想いは日に日に大きくなり、ついに少女は旅に出ることを決意したのです。
しばらくは聞けなくなる、おじいちゃんのおとぎ話。
少女は、その物語にどんな想いを馳せているのでしょう。
伝承が終わり、少女の物語が始まる…
伝承を聞き終えた少女が、ゆっくりと目を開く。
「みんな、かわいそう」
それは、いつもの感想。
アールティヒは、最初は幸せそうに “ 箱庭 ” を眺めていたはずの神を想像すると、胸が痛むのだった。
「そうじゃな。 まぁ、ただのおとぎ話じゃよ」
いつも、そう締めくくるおじいちゃんが、どこか寂しそうな顔をすることを私は知っている。
きっと、この “ おとぎ話 ” には真実が隠されている。
そんな風に思っていた。
「いよいよ明日じゃの」
「うん!」
冒険に対する強い憧れと、両親に会いたいという淡い願い。
その二つが私の心を躍動させる。
「いつでも帰っておいで」
すごく心配なのに。
本当は引き止めたいのに。
それでも優しい見送りの言葉をかけてくれる。
私の気持ちを知っているから。
「ありがとう、おじいちゃん」
精一杯の笑顔で応えた。
テントに戻ってくると荷物の確認を済ませる。
大したものなんて入っていないから、一瞬で終わっちゃった。
灯かりを消して床に潜り込んだけれど、どうしても寝付けない。
わくわくが抑えられない。
どきどきが止まらない。
ふと、淡い願いが溢れ出す。
そっと、それを拭う。
がんばろう。
少女は静かに眠りについた。
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