冒険前夜





『冒険前夜』 を聴く





草原の村に残された伝承。
その物語を丁寧に読み聞かせる老人と、静かに耳を傾ける少女。

少女の名前は、アールティヒ。

草原の村で生まれ育ち、いつも元気に走りまわって遊んでいる女の子。
少女の傍に両親の姿はありませんが、村の人たちに温かく見守られながら幸せな毎日を送っています。

そんな、何不自由なく生活をしている少女にも夢がありました。


“ 外の世界を旅してみたい ”


そして、叶えたい願いがありました。


“ お父さんとお母さんに会いたい ”


その想いは日に日に大きくなり、ついに少女は旅に出ることを決意したのです。

しばらくは聞けなくなる、おじいちゃんのおとぎ話。
少女は、その物語にどんな想いを馳せているのでしょう。





伝承が終わり、少女の物語が始まる…





伝承を聞き終えた少女が、ゆっくりと目を開く。

「みんな、かわいそう」

それは、いつもの感想。
アールティヒは、最初は幸せそうに “ 箱庭 ” を眺めていたはずの神を想像すると、胸が痛むのだった。

「そうじゃな。 まぁ、ただのおとぎ話じゃよ」

いつも、そう締めくくるおじいちゃんが、どこか寂しそうな顔をすることを私は知っている。
きっと、この “ おとぎ話 ” には真実が隠されている。
そんな風に思っていた。

「いよいよ明日じゃの」

「うん!」

冒険に対する強い憧れと、両親に会いたいという淡い願い。
その二つが私の心を躍動させる。

「いつでも帰っておいで」

すごく心配なのに。
本当は引き止めたいのに。
それでも優しい見送りの言葉をかけてくれる。
私の気持ちを知っているから。

「ありがとう、おじいちゃん」

精一杯の笑顔で応えた。



テントに戻ってくると荷物の確認を済ませる。
大したものなんて入っていないから、一瞬で終わっちゃった。
灯かりを消して床に潜り込んだけれど、どうしても寝付けない。

わくわくが抑えられない。

どきどきが止まらない。

ふと、淡い願いが溢れ出す。

そっと、それを拭う。

がんばろう。

少女は静かに眠りについた。





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