幻想雪原
♪『幻想雪原』 を聴く♪
「すごーい!」
目の前に広がるのは果てしない銀世界。
見渡す限り雪で覆われた大地は、夜にも関わらず光を生みだしている。
その光景は、これからの行く末に希望を見出そうとする自分の心と重なって見えた。
「懐かしいな」
少女達を少し離れたところから見守っているイナーリヒとジェントは、
イリゼとの旅を思い出し、その頃の彼女と変わらないアールティヒの様子に懐かしさを覚えた。
「…ま、あの頃の俺の立ち位置にいるルミナちゃんは大変そうだがな」
その視線の先では、もう一人の小さな冒険者が両手を広げながら大地を駆けまわり、ルミナの手を焼かせている。
「…あぁ、そうだな。 本当に、そうだ」
懐かしい記憶と、いま目の前で繰り広げられている微笑ましい光景は、気難しい男をも笑わせてみせた。
「もうっ! 危ないんだから大人しくしてなさいってば!」
はしゃぐ二人に翻弄されながらも、かつて飛び出した故郷への足取りが確かなことに、ルミナ自身、驚いていた。
誰かと共に歩くということが、こんなにも勇気をくれるのだと。
その身には重すぎる使命を背負わされた少女も、そうだったに違いないと確信した。
そう思い至ったルミナの視線は、その少女を支え続けた男達へと向けられる。
こちらの想いを知ってか知らずか、お調子者が手を上げてみせたけれど、
なんだか気恥ずかしくなって、つい無視してしまった。
悪いことをしたかなと思いつつも、あの二人のやり取りを想像して笑ってしまう。
無視されちまった。
お前が不審者だからだ。
…なんてね。
「無視されちまった」
「お前が不審者だからだ」
「ねぇ! ルミナもやろうよ!」
小さな少女が二人、顔を雪まみれにしながら戦っていた。
その満面の笑みを見た瞬間、あの子の笑顔も浮かんで見えた。
「そっか…笑ってくれるんだ」
そう呟いたルミナの顔を不思議そうに見上げる二人。
「いま行くわ」
そう “ 少女達 ” に宣言すると、やる気を窺わせる腕まくりをしてみせた。
「そうこなくっちゃ!」
大人であることを忘れたかのように、ルミナは小さな少女達と夢中になって遊んだ。
その屈託のない笑顔に隠された涙に気付いたものはいなかった―
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